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© Hikita Chisato

シャルロットさんのキッチン

2018.05.03

フランス人のシャルロット・ケーヒルさんの自宅を訪れたのは昼下がり、窓から明るい光が差し込んでいました。レトロなイラストカードが貼られていたり、カラフルな調理器具が無造作に並べられていたり。お洒落だなあと感心します。フランスでよく食べていたお料理を紹介してほしい。そんなリクエストにあれこれ考えたようで、ノートにはメモがびっしり。そして選んだのは、彼女のお母さんもよく作ったと言うトマトのタルトでした。

まずは生地から作ります。駅前のスーパーで買って来た日本製のマーガリンに塩、小麦粉と少量の水を加えて練ったら、皿に伸ばします。そこに、フランス製のマスタードを薄く塗ります。友人から聞いたこのやり方が、シャルロットさんのこだわりだそうです。オーブンで生地に火を通し、表面がパリっとしてきたら、スライスしたトマトや刻んだブルーチーズを並べて、さらに熱します。オリーブオイルを垂らすのも忘れずに。調理道具を洗うのは、夫デビッドさんの仕事。ついでに味見もペロリ。うまく出来たようです。

火を通したためにトマトの酸っぱさは薄れ、ブルーチーズの旨味とマスタードの風味が加わります。サクッとした生地をフォークとナイフで取り分け、お腹いっぱいになるまで味わいました。デザートはフォンダンショコラ。フォンダンはフランス語で溶けるという意味で、フランスを代表するお菓子です。焼きたてにスプーンを入れると、中からとろりと熱々のチョコレートが溶け出します。コーヒーと一緒に、食後の楽しいひと時を過ごしました。

(初出:共同通信社から全国の新聞に配信「異邦人キッチン」:2014)