INFO

© Hikita Chisato

001

ワールドカップ、次回オリンピック開催地ということで注目を浴びているブラジル。あまりに遠く、これまで訪れる機会がなかったのですが、ブラジルに友人ができたことを機に、思い切って撮影旅行に出掛けました。経由地のアメリカでサンパウロ行きの飛行機に乗った途端、飛び交う言葉がポルトガル語になります。全然話せないけれど、大丈夫なんだろうか。隣に座っていたおじいさんに英語で話しかけたところ全く通じなかったので、にわかに緊張感が高まります。

空港からは予約していたタクシーに乗り、友人のマンションへ。到着したのは、日系ブラジル人がたくさん住むリベルダージ地区。移民資料館もあるその街には、日本の食材が揃うスーパーやレストラン、雑貨店などが並んでいます。友人も日系ブラジル人で、名前はソラヤちゃんと言います。彼女の父親は、20代の頃に沖縄からサンパウロに渡った一世。希望を胸に新天地に渡りましたが、そこで待っていたのは過酷な労働待遇。親族とも遠く離れ、精神的にも苦しい時期が続いたと想像出来ます。それでも必死に働き、日系二世であるソラヤちゃんの母親と出会い家庭を作りました。

私は一世と二世のハーフだよ、そう笑うソラヤちゃんが彼女の実家に誘ってくれたのは、ある週末のことでした。サンパウロのバスターミナルから出ている長距離バスで約2時間。住所はサンパウロ市だけれど、のどかな空気が流れる郊外の小さな町。駅前にあるマーケットで母親からことずけられたお使いを済ませ、タクシーで実家に伺いました。

少し高台にある彼女の実家は広々していて気持ちがよく、お母さんが用意してくれたビーチサンダルに履き替えたらすぐにキッチンを覗きました。ぜひ家庭料理を食べたい、そんなわたしのリクエストに答え、定番の豆の煮込みやソラヤちゃんが昔から好きだったと言うチキンカツレツ、マヨネーズで和えたポテトサラダなどがずらりと並びます。その中でも特に気に入ったのはヤシの新芽を使ったサラダ。酢漬けにして瓶で売られているこの食材はどこか食感がタケノコに似ていて、ボリュームたっぷりなブラジル料理に少し疲れた胃にも優しい。お手製のドレッシングを掛けて、いただきます。

ケーブルテレビからは日本の番組が流れていて、いつもどこかで祖国のことを考えているお父さん。あまり上手くないからと、日本語で話すことを恥ずかしがるお母さんやお兄さん。言葉が通じない国をジェスチャーで乗り切ってきたわたしですが、心のこもったおもてなしを受けながら、とてもホッとしたことを覚えています。

(初出:南大阪フリーペーパーFerie「しあわせをはこぶレシピ」)