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© Hikita Chisato

ブラジルのテーブル

2018.05.01

ブラジルには友人を頼って行った。サンパウロにあるマンションに一か月ほど泊めてもらったので、彼女の親友たちにも会うことが出来た。中でもアレとハファ夫婦には、週に一度くらい会っていた気がする。
最初に紹介されたのは、市内にある大きな市場に出掛けたとき。アレは料理好きで市場にも詳しいから案内役をしてくれたのだ。二人はわたしを家に招き、得意料理を振る舞ってもくれた。パイやタルト、ケーキなどプロ顔負けと評判のアレ、その日は野菜のキッシュを作ってみせた。アメリカのテレビドラマ(懐かしい「フレンズ」が特にお気に入りで、新婚旅行はロスにあるスタジオ見学に行ったらしい)が大好きな二人の食卓は、ブラジル料理が並ぶ訳ではなかった。時には宅配でピザを頼んだり、中東料理のレストランで外食したり、ドイツ人街でビールを飲んだり。都会に住む若者たちの暮らしは、東京のそれに似ている。

アレの正式な名前はアレッサンドラと言って、イタリア系ブラジル人だ。夫ハファのスペルはラファエルと読めるのだけど、ポルトガル語ではハファエルに聞こえる。彼はスペイン系ブラジル人だと聞いた。
ブラジルにはたくさんの移民、アフリカから連れて来られた黒人、元々住んでいたインディオの末裔たちが暮らしているため、たくさんの人種が入り混じっている。部屋に泊めてくれた友人だって、日系3世だ。ポルトガル語は喋れないけれど、キョロキョロせずに堂々と早歩きをすれば、わたしも街に馴染める。広いブラジル各地の料理に加え、様々な国の料理も楽しめるのがサンパウロの魅力の一つだった。

(初出:WEBマガジン「R the TIMES/すべてはテーブルから始まる」:2016)