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© Hikita Chisato

「悩む人」カメラマンの仕事

2021.01.09

カメラマンが新しい仕事を作るって、どういうことだろう。基本的には、声を掛けてもらえなければ仕事はない、受け身な職業だと思っている。なので独立したばかりの頃は、声を掛けてもらえることが嬉しく、わたしではなくても良いだろう仕事もたくさん引き受けた。撮影のスケジュールが優先で、もし合わない場合は別のカメラマンが撮影するような仕事。もちろん、被写体の方のスケジュールがピンポイントな場合はどうしようもない。ただ、本当は何日か候補日を出してもらえるのが理想なので、そんな仕事を増やすことを目指しやってきた。

ただ、受け身でばかりいたらいつか仕事が無くなるのではないか。そんな危機感は常にあったし、時代や自分の年齢が変わるにつれ、自ら発信することも増やそうと考えるようになった。自分で写真集を作ってみたり、写真展を開催したり。その行動によって、新しい友人がたくさん増えたし、故郷みたいに思える場所も出来た。その土地で、良かったらこの撮影お願い出来る?なんて言って貰えることもある。

それとは別によくしいてたのが、人に人を紹介すること。仕事のパートナーとしての人脈をと言うよりは、気が合いそうな人たちを引き合わせることが楽しかった。そんな行動は、人を探しているときに適した人を紹介してくれる、という印象を付けているかもしれない。

それらは巡りめぐって自分に返ってきている。近頃で言うと、写真集に関連するイベントに参加してくれた友人が、新規事業に携わることになった際に、わたしに編集者とデザイナーの紹介を依頼してくれた。周りに個性豊かで優秀な方がたくさんいるので、自信を持って紹介出来た。カメラマンを探していたわけではなかったのだけれど、結果的に編集者とデザイナーはわたしの写真を押してくれている。

以前、チームワークを発揮しなくてはいけない物作りをしたとき、最終的に目指すゴールが少しずれていたため、大変辛い思いをしたことがあった。それはわたしのトラウマになっていると言っても過言ではない。でも、今回の新規事業に向けたチーム作りに携われたことは、わたしに小さな自信を与えてくれたし、以前の失敗の原因が何だったのかも教えてくれる。あの経験が糧になっているのだなと思うと、本当に救われる。

カメラマンに必要な技術は、欲しいと思われている写真が撮れること。それに加え大切なのは、この人に撮らせようと思われること。技術と共に、信念を行動で見せていくことも大事なのかもしれない。それはまだ手探りではあるけれど、例えばわたしは人の生活を、営みを撮りたいと思っていること。人々が守り継いできた在来野菜の種を繋いでいくことに興味を持っていること。グローバルな視点を持ちつつ、それをローカルに生かしたいと思っていること。それらを、発表する写真と共に伝えて行けたらなあと、最近はそう考えている。

(初出:WEBマガジン「salitote」:2018)