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© Hikita Chisato

「ohashi_to」北京の夜を泳ぐ

2021.01.19

ホテルから一歩踏み出すのさえ躊躇してしまうような、冬の北京の寒さ。ダッフルのロングコートと毛糸の帽子、足下は雪山にも行けそうなブーツ。完全防寒で夜の街に繰り出して、白酒とツマミになる木の実とスナック菓子を買い込んだ。帰り道に人通りなんてほとんどなくて、それでも夜遅くまで開いているスーパーは薄明かり。道路との仕切りがガラスじゃなくて、分厚いビニールで、灯りとフルーツと暇そうにする店員がユラユラと映りこみむ。水槽を覗き込むような気持ちになった。

北京にもいつか行きたいなあって思っていた。でも、わたしの旅は大体が思いつきで手探りだから、下準備が足りない。昨年の今頃も、友人たちが北京でイベントをしているからと、突然思い立って訪れたのだ。まさかその後、世界中でこんなにウィルスが猛威を振るうなんて、考えもしていなかったから、きっとまた暖かい時期に再訪しよう、なんて呑気に願っていたな。

あれから一年。今度旅に出られる日がきたら、アレもしたい、コレも食べたい、彼処に行きたいって夢が膨らんでいる。小学生の時に外国文学を読んでいた頃のように。カメラマンとして食べて行けるようになるまでは海外旅行は封印だ!と心に決めて、下積み生活していた時みたいに。